本草綱目 甘草の効能効果 北京語古文体翻訳

 

19.補気薬

73.薬屋の甘草(甘草)

甘草GlycyrrhizauralensisFischer

昔、ある村落に診脈と治療に優れた年寄りの医者が居たが、

その村には彼の他には医者がいなかったので、

村の患者は皆、彼の診察を受けた。

また、

近隣の村にも医者が居なかったので、

患者が出れば診察を受けにくるか、そうでなければ往診を請うのであった。

そのうちに彼の名声が広く知れ渡って、

遠い所から往診を願う事もたまにあった。

ある日、

他の村から数名の患者が往診を願い出たので、

幾日かの間 留守をした。

しかし

留守の間にも自分の村に患者が続出して医院に診察を受けに訪れた。

 

「今、他の村の往診に行っ来ましたのですみません。」

「では、お医者様はいつ頃 お帰りでしょうか?」

 

「さあ。一度往診に行くと幾日間も帰らないのです。」

患者達は指折り数えて医者の帰りを待ち焦がれた。

医者の奥様は一日に数回も戸を叩いて

診察を請い願われるので次第に焦り始めた。

「私が薬を作って患者達にあげる事が出来たら良いのに・・・」

婦人は溜息を付きながら臺(台所)に入った。

台所には炊き物の乾草が山程積み重なっていた。

「これが皆、薬草だったら」

と思いながら何気無く乾草の枝を一本掴み揚げ、

口に入れて噛みしめたが、それには甘味があった。

「よぉし!これを細切りにして薬封じ袋に入れてやろう。

この乾草を煮炊いて食べても体に何の差支えはあるまい。

患者は薬を服用したとの安心感の心理的な作用で病気が治るかも知れない。」

 

婦人は乾草を細切りにして、

薬封じ袋に入れて訪ねて来た患者達に与えた。

「これは医者が往診に出掛ける前に残して置いた薬です。

大抵の病気は皆、治る筈です。

これを持って行って煮炊いて服用しなさい。」

そうすると、どうしたことか、大部分の患者はその乾草を服用して病気が治った。

 

数日の後、

医者は村に帰って来た。

病気が治った患者達が薬代を持って訪ねて来た。

医者はお金を貰いながら訝(いぶか)しく思った。

「薬代?私は貴方達にこしらえてあげた覚えがないんだが・・・」

「お医者様の代わりに奥様から薬を貰ったのです。」

医者は首を傾けて訳が分からず、

「私の妻が患者を治療したと言うのか?

一体どんな薬を上げたんだろう!」

婦人は患者達が皆 帰った後、一部始終を話した。

医者はあまりに意外な事を聞いて目を大きく見張り、

「何?台所に積まれていた乾草を切ってやったと?

一体どんな草が病気を治したと言うのか?

大部分の患者は各々違った病気であろうに、

どうして全ての病気に効いたのか?

それは本当に解せない話だ。」

翌日、

医者はその乾草を服用した人達にそれぞれ一人づつ会い、

彼等が患った症状を聞いた。

ある人は 胃腸が悪かったし、

ある人は 痰が多くて咳嗽が止まらなかったし、

ある人は喉が痛かったし、

また 腫瘍があった人、

胎毒があった幼児等々であった。

過半数が 感染症患者であったが、

皆、全快したのだった。

それから医者は、

この乾草を各種の疾病を治療するのに使ったが、

この薬草は脾臓と胃腸を補うだけでなく、

血圧を下げ、毒を除去し、他の薬材と一緒に煮炊けば、

相乗作用を起こして薬の効力を促進させると言う事を知った。

その後、

この薬草は甘味があるので甘草と呼ばれた。

薬屋ではいろいろな処方にしばしば使われ、

他の薬材と混ぜて使う場合、

お互いに調和する効力があるので、

『薬屋の甘草』という言葉が出回るようになった。

漢方というのは薬の処方と言う意味である。

本草綱目 翻訳 以上

 

甘草は、味が甘く、

成分はグリシリジン(Glycyrrhizin)、

リクイリチン(Liquiritin)、

葡萄糖、アスパラギン(Asparagin)等が含有されており、

心臓、肺臓、脾臓、胃に薬効が及び、全ての薬の毒性を解いてくれ、

咽喉痛を無くし、正気を全うし、痰を除去し、鎮咳作用があり、

慢性咳嗽、腹痛、便が水っぽく出る時、

また、腫瘍を解かし、痛症を緩和してくれる。

特に赤ん坊が胎毒で熱が有る時、

甘草を煮炊いた水を飲ませれば効果がある。

甘草は副腎皮ホルモンを正常的に分泌させ炎症を無くし、

潰瘍を治療し、皮膚炎にも良い効果があり、

特に副腎皮質機能障害で見られる

皮膚及び口腔粘膜の青銅色着色、

それから進行性貧血、痢疾、

及び消化不良を起こすアジソン氏病(Addison’sDisease)に効果が顕著である。

 

 

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